地声でも変わらない穏やかで綺麗な声と、声と同じ、優しい面立ち。
この度インタビューにご協力頂いたのは、演技・歌・創作とマルチな才能を発揮される、声優・粕谷大介さん。Sakaseru通じ、ファンの方から幾度もお花をお贈りさせていただいている方です。
オンライン上で楽曲を聴くこともできますが、その実力は素晴らしいものがあります。
「声優」の枠から飛び出ていく粕谷さんのご活躍の裏には、一体どのような思いがあるのでしょうか。
そこにはその優しげな印象とは裏腹に、熱く、一途なお気持ちがありました。
お花を贈って下さる方や、応援して下さる方全てに対する感謝の想い。応援に応えたいというお気持ち。粕谷さんにじっくり、お話し頂きました。
粕谷大介さんはもともと、声優業ではなく舞台での役者業をメインにされている方でした。
「もともと、脚本家の三谷幸喜さんに憧れて芝居を始めたんです。三谷さんの描いているような、『シチュエーションコメディ』がやりたくて、劇団に入りました」
劇団に入団したのは大学在学中のこと。数多ある外部の劇団の中でも、初めからシチュエーションコメディを演じている劇団に絞って、応募したそうです。
一大学生にとっては、その行動は大きなエネルギーを必要とするように思えます。その情熱の源をお伺いすると、「なんでそんなことできたんでしょうね」と首をかしげる粕谷さん。
ただ、物事への一途さはご自身でも感じているそうで、こんな風に話してくれました。
「一つのことに夢中になっちゃうと、他のものが見えなくなってしまうんですよね。
『今それやる時じゃないでしょ!』っていうようなこともあって、それは自分でも良くないなと思うんですけど 笑」
ともあれ、希望する劇団に所属したのちは、何年間ものあいだ、舞台役者として活動していきます。これまで「就職しよう、と思ったことがない」という粕谷さんは、大学卒業後、迷いも葛藤もなく、芸能の世界に本格的に足を踏み入れます。
転機が訪れたのは、あるアニメを見た時のことでした。
「元々アニメを見る方ではなかったんですが、見てみたらすごく面白くて。“お芝居”って舞台だけじゃないんだと、それをきっかけに視野が広がりました」
声の分野でお芝居をするため養成所に入った粕谷さんは、その後、見事に事務所入りを果たします。
全身を使って表現する舞台と、声で広がりを持たせる声優業。そこに戸惑いを感じたこともあると言いますが、『舞台でしかできない表現』『声だけでしかできない表現』それぞれの特徴を掴み、活躍の場面を増やしていきました。
「以前、『SHOW BY ROCK!!』というアプリに歌で出演させて頂いてから、歌の活動も積極的に行うようになりました。
最初はカバーをやっていたんですが、そのうちオリジナル曲を作るようになって、今ではオリジナル曲だけでライブをやっています」
声の仕事そのものも増えつつある中、そんな『歌の活動』、更には、思いもよらない分野に粕谷さんは手を伸ばしていきます。
自身のライブの中で、自作の『紙芝居』を披露するようになったのです。
声優の方で歌を歌う方はいらっしゃいますが、紙芝居はなかなか、ないのではないでしょうか。しかも歌も紙芝居も、その多くは仕事ではなく、ご自身で企画・制作を行うライブでのこと。
「紙芝居については、歌だけのライブより、自分は役者だし、その役者の部分でも何かできないかな、と思いまして」
それに、と粕谷さんは続けます。
「自分が作った話・絵で楽しんでもらえるのがすごく幸せなんです。もちろん、お仕事を頂いて演技をし、喜んでもらえることも幸せなんですが、自分の作ったものでというのは格別です」
楽しんでもらうのが幸せ――すんなり納得できる理由なようでいて、一方で、ただその気持ちだけで、粕谷さんほど情熱を注げる人は、世の中にそう多くないようにも思われました。
そこで、「人に楽しんでもらいたい、その気持ちはどこから来るのか」、との問をさせて頂いたところ、しばらく考え込む粕谷さん。
「やっぱり、表現する者として、自分の表現で喜んでもらえるのって何事にも代えがたいんですよね。
それに、応援して下さる方は僕にとって、なによりの原動力なんです。その人達に喜んでもらわなければ、活動していてもあまり意味がないと思っています。だからより喜んでもらえるようにしたいなと。
思えば『自分にファンがいてくれるんだ』と初めて感じたときは不思議な感覚でしたが、それからもっと頑張らなきゃ、もっと楽しんでもらいたい、と考えるようになりました」
原動力になってくれる皆さんにより喜んでもらえるよう、ご自身で発信し、作り上げていく。
楽しんでもらいたいと思う粕谷さん。楽しんでもらっている実感。増えていくファンの方。素敵なサイクルができているようです。
そんな粕谷さんに、今後の目標をお伺いしました。
「声の仕事をもっともっとしていきたいと思っています。今はネットの配信だったりゲームだったりが多くて、それもとてもありがたいんですが、テレビ放映される作品など、より多くの方に見てもらえる機会を作りたいです。
それが応援して下さっている方たちへの恩返しと言うか、喜んでもらえると思うので。より沢山の仕事をして、楽しんでもらいたいと思います。
あとは、さっきも言いましたが、お芝居や舞台を作ってみたいとも思っています。作演(注:脚本・演出どちらも手がけること)をすることは一つの目標です」
ご自身で企画・開催しているイベントはプレッシャーになることもあるそう。しかし、そう語る瞳はきらきらと輝いていました。
最後に、ファンの方へのメッセージを、粕谷さんの言葉でお伝えさせて頂きます。
「本当に皆さんの応援、声が自分にとっての原動力になっています。
お仕事ひとつひとつを、ファンの方に楽しんで、喜んでもらいたいと思っています。
僕にとっては皆さんの気持ち一つというのが本当に大きくて、なんとなくお花を受け取ったり、お手紙を読んでいたりしないです。毎回一つ一つ嬉しく頂いています。
今後も楽しんでもらえるように、仕事も作品作りも頑張っていきますので、楽しみにしていてください」
「好きなことに対して周りが見えなくなる」今回のインタビュー中で、粕谷さんから何度も出た言葉ですが、たった1時間少々お話させて頂いた中でも、それがよく伝わってきました。
ご自身では「よくないこと」などと仰っていましたが、お話の中から伝わってきたのは、夢中になっているもの、力をくれる人たちへの誠実で、真っ直ぐな姿勢。ご自身が大事だと感じたことを、ひたすら貫ける方なのだと感じました。
また、インタビューの中では「僕褒められたい人なんです」といった言葉や、趣味のカードゲームなど、役者さんとして「以外」のお話もありました。朗らかに笑いながら話すそれらの言葉と、仕事やファンの方への真剣な言葉には差があって、きっとそんなギャップにもファンの皆さんは惚れ込んでいらっしゃるのかな、とも。
魅力的な演者さんというのは、演技的なスキルだけでなく、そのお人柄もあるのだと感じられた場面でした。
多才で、やりたいことが沢山で、ファンの方を何より思う粕谷さん。今後のご活躍、Sakaseruからも心から応援させて頂きたいです。
粕谷さん、この度はお忙しい中インタビューにお答え頂き、本当にありがとうございました。
この場を借りて、改めてお礼申し上げます…!
* * *
【今回インタビューさせて頂いた方:粕谷大介さん(@hanabunbunboo)】
【取材・執筆・撮影】Sakaseruアスカ
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