びし、とスーツで決めたこちらの男性は、声優・佐藤拓也さん。深みのある声質で幅広い役柄を演じ、アニメ・ゲーム・吹き替えなどご活躍中の声優様です。
Sakaseruからも数多くお花をお届けさせて頂いており、お仕事の中で数えきれないほどお花を受け取ったご経験もある方。そんな佐藤さんに、この度インタビューをお受け頂くことができました。
お花を数多く受け取る――つまり、人気声優である佐藤さん。その人気の所以、声優という仕事への向き合い方、そしてファンの方への想いをお伺いしました。
佐藤さんが声優を志したのは、なんと小学生の頃。
「もともと小さい頃、アニメの中の変身ヒーローが大好きで、憧れていたんですよね。それで"声優"という職業をたまたま知ったんです。声優だったら変身ヒーローでも、人間じゃないキャラクターでもなれるな、それって面白いじゃん、と。笑
そう思ったのがきっかけだったと思います」
無邪気な想いは、現在まで続いていきます。
しかし、その間に“なりたいもの”は変わらなかったのでしょうか。
「変わりませんでしたね。他になりたいものが見当たらなかったんですよ。
声優として演じたい、という欲求がずっとあって、でもできる環境は地元にはなくて。だから高校卒業後、上京して養成所に入るのにも迷いはありませんでした。
できるかどうかはわからないけどとにかくやってみたい、と」
親御さんも、まずはやってみたら、というスタンスだったという佐藤さん。養成所に入ったあとは、そのまま事務所に所属します。しかし、想像していたイメージと現実とは、少しギャップがあったそうです。
「思い描いていた、華やかなサクセスストーリー、とはなりませんでしたね。
29歳頃までアルバイトも続けていました。
声優だけでやっていけるようになるまで、想像よりも時間がかかってしまいました。30歳までに声優としてモノにならなかったら地元に戻る、という約束も両親としていたので、実はぎりぎりだったんです」
佐藤さんのようにご活躍されている方でも、29歳までアルバイトを平行されていたということに、インタビューアであるSakaseruスタッフは驚きを隠せません。
「飲食店だとかテレアポだとか、本当に色んなアルバイトをしましたよ。笑
アルバイトを辞める時は勇気が要りましたね」
一体なぜ、そのタイミング“売れる”ようになったのでしょうか。
「これはもう、わからないですね。
たまたま、メインの役柄をやらせて頂ける環境があって、色んなことを教えて下さる先輩方がいて、僕を面白がってくれる方がいて……。
これ! というきっかけがあったというよりは、人との出会いだったり、ちょっとした嬉しい偶然の積み重ねだと思います。
あとは自分が演じた役柄を、愛してくれる視聴者の方がいたからこそ、ですね。
今だって役のオーディションを受けても、受かることのほうが少ないですし、受からなかった時は理由もわからないんです。ベストを尽くした先に繋がるものがあれば、運がいい。そういう世界です」
現在も月に何度かオーディションを受けていると言う佐藤さんは、「一生、就職活動です」と、笑います。
お忙しい合間にオーディションを受け、落ちることの方が多く、それがずっと続いていく……そんな風にだけ考えると、声優というお仕事はやはりとてもハードなものに感じられます。
佐藤さんは辛い、辞めたいと感じることはないのでしょうか。
「辞めたいと思ったことはないですね。好きではじめたことですから、ずっと好きでいたいと思っています。確かに昔はオーディションに受からないと落ち込んでいましたが、今はご縁がなかったんだなと割り切れるようになりました。
立ち止まってるのも、人を羨んでいるのも、もったいないです。
だってオーディションに落ちたからといって、そこで立ち止まってしまったら、出会えたかもしれない役柄に出会えなくなってしまうんですよ。
それにハードだと言いますが、どんなお仕事でも一緒だと思っていて。
例えままならないことが8割、9割でも、残りの1割ないしは2割にやりがいを感じることができたら、人って続けられると思うんです。しかも、声優っていう仕事は夢もやりがいも、ものすごくあります。
僕が演じたものが誰かの元気のもとになったり、一時の癒やしになったり。自分が好きでやったことが、誰かの役に立っていると思うと素敵だし、とてもやりがいに感じますよね」
“やりがい”――人それぞれの意味を持つその言葉は、佐藤さんにとってはどのような意味なのでしょうか。改めて尋ねると、佐藤さんはやりがいかあ、と呟き、腕を組んで天井を仰ぎました。
「先程言ったように、視聴者の方に喜んでもらうことはもちろんですが、作品に関わる人に喜んでもらえたら、すごくやりがいを感じますね。現場のスタッフさん、作品の放映に携わる人、放映したものを売る人。そんな周りの人が少しでも喜んでくれたら、やりがいになります」
その視野の広い考えを意識するようになったのは、最近だと言います。
「思えば、ステージに立たせて頂けるようになったからかもしれません。キャラクター・作品を背負って、そのキャラクターを愛する人たちの前に立つ。そうして、役に対する責任というのがどういうことなのか、よりダイレクトに考えられるようになったのかもしれないですね。
何かのコンテンツを作り上げるのに、誰しも一人ではできません。自分ひとりが持っているものというのは些末なものです。
誰かが僕を拾い上げて役という価値を持たせて下さって、スタッフさんが僕のお芝居を収録して、放映して下さって――そんな沢山の人が関わって初めて、僕は声優として存在できるわけで。
そう考えると、演じさせてもらっているキャラクター含め、関わって下さる人たちにはただ感謝ですし、お仕事でお返ししたいですね」
佐藤さんと言えば、役柄の幅広さも印象的です。時にはクールなイケメンキャラ、時には豪快なワイルド系、暖かなお兄さんキャラまで……お芝居のために意識していることはあるのでしょうか。
「うーん、自分が見聞きして面白いと思えることに、常にアンテナを張っている、ということでしょうか。
漫画も映画もお笑いも好きですが、ただ見るだけではなく『この人を自分はなんでおもしろいと思ったんだろう』『なんでこのお芝居素敵だと思ったんだろう』なんてことを考えています。
最近はお笑い芸人さんとご一緒することも多くて、ああいう方々は呼吸や間の取り方が本当にすごいですね。ただ面白いことを言っているんじゃないんです。お笑いもお芝居も、結局は人と人とのやり取り・関係性だと思いますので、本当に勉強させてもらっています」
その謙虚な言葉に、Sakaseruスタッフは別のメディアで「尊敬する声優さんは1人に選べない」と仰っていたのを思い出しました。
それは今でも変わらないのでしょうか、とお尋ねすると、やや食い気味に「変わらないですね」とのお答え。
「変わらないです、選べないですね。皆好きです。笑
先輩や同年代はもちろんですが、10代、20代の若い人たちにも沢山学ぶところがあります。
その年代の人達の感じ方とか自己表現の仕方って、やっぱり自分たちの世代とは大きく違っています。動画サイトで活動をするなど、自分で自分のフィールドを作っていける強さを持っていたりですとか。思考回路も全然違いますし、『なんでそういうお芝居のアプローチをするんだろう?』と考えたり、とても勉強になります。
声優、というお仕事は今、お芝居はもちろん、ラジオでトークを求められて、カメラの前で笑って、ステージではダンスや歌も見せるわけで……。
今の若い方は、若いうちからそういった色んなことを求められて、応えているのかと思うと本当にすごいですよね」
先輩、同年代のみならず、年若い方からも学びを得るというその姿勢に、思わずSakaseruスタッフは、「佐藤さんはものすごく柔軟ですよね」と口にしました。それには「だって、柔軟でなければやっていけない仕事だと思いますし、柔軟な方が楽しいですよ」と佐藤さん。
「先程も言いましたが、今本当に沢山のことが声優には求められますからね。だから仕事の選び方も柔軟に、というか、基本的にまずはやってみる、という姿勢でやらせて頂いています。
先程も言ったように、場があって初めて僕らは存在できるわけですから。新しいことでも、どんなお仕事でも、やってみてから考えよう、と。
絶対吸収できることがありますからね」
Sakaseruのインタビューをお受け下さったことにも、そのお仕事への非常に高い意識が表れるようです。
ほかに、お仕事をする中で意識していることはあるのでしょうか。
「いい意味で周囲の期待を裏切りたい、期待を超えたいというのは意識しています。
沢山の役柄を演じさせて頂くようになればなるほど、視聴者の方だったり、製作する側の方は『佐藤がこういう役を演じるならこうするだろう』というイメージを持つと思います。それを、裏切りたいんです。
だって似た雰囲気のキャラクターだとしても、一人ひとり違う人物なわけですから。声帯は佐藤拓也かもしれないけれど、そのバックボーンも考えていることも絶対に違います。それを声で表現するのが僕たちの仕事でもあります。
また、毎日ちょっとは違う自分で臨んでいきたいな、という気持ちがあります。例え長く付き合っている役でも、かけらでも新しい要素を入れていきたいと思っています」
その佐藤さんの言葉には、これまでの自負とお気持ちがはっきりと表れていました。
今回のインタビューにあたり、Sakaseruスタッフが気になっていたのが、その人気に対してファンの方と距離近く接される様子でした。
Twitterを毎日のように更新され、『佐藤サン、もう1杯』というyoutube番組のリアルイベントでは、ファンの方と同じテーブルで食事をする、というようなこともされています。
例えばこちらは、どのようなお考えから実施された企画なのでしょうか。
「『佐藤サン、もう1杯』のイベントに関しては、僕が面白そう、やりたい、と思ったからですね。そのイベントは地方でやるんですが、だいたいイベントって東京近辺で開催されるんですよ。いっつも来てもらってばかりで、たまには『こっちから行ったらいいじゃん』と思って、そこから『どうせだったらファンの人とご飯を食べたら楽しいんじゃないか』と提案しました」
ファンの方に喜んでもらうための考えの一つ、というお答えに、改めてそのファン想いの姿勢を思い知らされます。
そのイベントに参加されたファンの方は、きっととても喜ばれたのではないでしょうか。
「喜んでもらえたらいいな、と思っているので、そうだったら嬉しいですね!」
ファンの方との関係については、お花のお話にも通じていきました。
「逆に、お花はファンの方からめちゃめちゃ元気を貰います。
一つ一つデザインも違って、すごく凝っていたりして、本当にありがたいなと。確実に、『皆さんに還元できるパフォーマンスをしたい』と僕たちが思う源の一つになっています。
出演させて頂いているタイトルによっては、本当に沢山のお花を頂くことがあります。その一つ一つをとても嬉しく感じています。海外公演に行ったときにもお花を頂いたりして、国ごとに特徴があったりして。
今でこそお花を頂くシーンが増えましたが、その嬉しさやありがたみは変わりません。
……10年位前に初めてお花を頂いた時は『俺、芸能人みたい!』と、驚きの方が強かったですけどね。笑」
お花から元気を貰える――それは、お花を運ぶ私たちSakaseruも嬉しく感じるお言葉でした。
「キャラクター宛のお花は、自分の仲のいい友達を応援してもらえているような……そんな感覚です。自分のことのように嬉しい、と感じていますが、一方で、自分宛とは一線引いて考えています。キャラクターに対して、『素敵なものを貰ったね、一緒に頑張ろうね』という気持ちになります」
程よく距離を保ちながらも、責任を持ってキャラクターに接される佐藤さん。それぞれのお花がそんな佐藤さんのパワーになっているようです。
最後に、応援して下さるファンの方へのメッセージとして、佐藤さんの言葉をお預かりしました。
「僕らのやることが皆さんの日々の何かの息抜きだったり、役に立ているという現実があることを、本当にありがたいなと思っています。
声優という職業は色々なところで表現をさせてもらいますが、これからも色んなことに挑戦させて頂くと思います。それがまた、皆さんの日々の笑顔の種になったりだとか、役に立つような、そんな佐藤でいられるよう、頑張りたいなと思っています。いつも応援ありがとうございます。
あと、みんなが元気でいてくれるのが一番嬉しいので……みんな健やかでいてください」
インタビューアのSakaseruスタッフが「実物の方が声もお顔もずっと格好いいですね」と言うと、佐藤さんは吹き出して首を振ります。「そんな、全然ですよ!」そんな謙虚な姿勢が一貫していらっしゃったインタビュー現場でした。
時には笑い、時には真剣な表情で。終始真摯に、インタビューに向き合って下さいました。
その中でスタッフが感じたのは、“覚悟”とも言えるような、声優という仕事に対する強い想い。そしてファンの方、周囲の方への深い感謝とリスペクトでした。インタビュー中に、何回佐藤さんの「感謝」や「ありがたい」という言葉を聞いたかわかりません。
またお花に関わる者として、「お花から元気が貰える」と言って頂いたことは、Sakaseruとしてもすごく嬉しいお言葉でした…! お客様の先の、演者さまの力になっていること。私達まで、力を貰えるようです。
このインタビューを終えたあと、佐藤さんは笑顔で、次のお仕事へ向かっていかれました。
佐藤さん、改めて大変お忙しい中、この度はお時間頂きありがとうございました。
今後ますますのご活躍、Sakaseru一同、微力ながら応援させて下さい。
【取材・執筆】Sakaseruアスカ
【写真】Sakaseru小柴
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